ドキドキと心臓が激しく打つ。

 以前、第二王子(ロベルト)に同じようなことをされたときには少しも感じなかった感情が襲ってくる。


 イルヴィスは何事もなかったかのように、再び席に戻った。



「で、殿下……あの」


「ロベルトなら挨拶くらいの気分でやりそうだが、私はそうじゃないからな。……一応断っておく」


「!」



 ますます頬が熱くなるアリシアと対照的に、イルヴィスの顔色は変わらない。

 それが何だか悔しくて、アリシアはそっと自分の頬を押さえてため息をつく。




「それで、何の話をしていたのだったか。……ああそうだ、これを」



 イルヴィスは数枚の紙を取り出し、アリシアに渡した。



「今朝、ミハイルが調べてわかったことをこの紙にまとめて渡してきた」


「ミハイルさん、色々と調べてくれたんですね」


「貴女の侍女も協力していたようだ。後で礼をいっておくといい」


「ノアまで……」



 二人とも通常の仕事で忙しいはずなのに申し訳ない。



「書かれている内容を簡潔に言うと、どうやらあのメイドはローラン公爵家と繋がりがあるらしい」


「ローラン家……ということは、サラ様?」



 頭にあの日の夜会が蘇る。アリシアに飲み物をかけてきたり、暗い部屋に閉じ込めてきたサラ。