「どうしたの……?」


「失礼します!」



 戸を開けるなり、部屋の外へ引っ張りだされた。

 目を白黒させているアリシアをよそに、ノアはじっと全身を観察する。




「服は大丈夫ですが、髪が乱れていますね。直しますからじっとしていてください」


「いったい何事よ!?」




 訳がわからず、髪の毛をいじられながら尋ねるが答えはない。

 無造作に下ろしていた髪をいつものハーフアップに結い上げたところで、ノアは満足気にうなずいた。



「これで良し。お嬢様、今すぐ客間へ」


「だから何があったのよ」


「行けばわかります」



 半ばノアに背中を押されるようにして、アリシアは階段を降りて、一階の客間へ向かった。


 客間の戸は開いており、中の声が少し離れた場所からでも聞こえてくる。アリシアはそっと部屋へ近づき、中の様子をうかがう。

 中では、両親がそろって誰かと談笑している。その相手を確認しようとさらに近づくと、父がアリシアに気がついて声を上げた。



「ああ、アリシア!遅いぞ、お前にお客様だ」



 気づかれたからには出ていかないわけにはいかない。「わたしに……?」と呟いて恐る恐る部屋に入る。

 その「お客様」の姿を確認して、心臓が止まりそうになった。