「……ニーナさん、大丈夫かしら」



 自宅謹慎をくらって一週間が過ぎようとしている。

 外の情報がアリシアのもとにほとんど届かず、ニーナに関しても数日前に目を覚ましたということ以外知らない。

 もう何度読んだかわからない小説をパラパラとめくり、何度目かわからないため息をついた。


 ノアはアリシアの無実を信じているようだが、当の本人は自分の無実を信用しきれずにいた。意識のないままに、ニーナに毒を盛り、命を脅かすようなことをしたのではないか。


 曖昧な記憶ではあるが、あの漫画での“アリシア”がした嫌がらせは、一歩間違えたら主人公(ニーナ)が命を失ってしまっていてもおかしくないものばかりだったはずだ。覚えていないだけで、実はアリシアがニーナに毒入りのお茶を差し出す場面があったのではないか。


 物語の強制力。意識的に頭から消していたその言葉が嫌でも浮かぶ。



(だとしたら、今後待っているのは断罪、それから……婚約破棄かしら)



 アリシアはいつか見た夢を思い出す。

 あの夢はニーナの首を締めようとしたところで終わっていたが、その後すぐに、イルヴィス本人から婚約破棄を言い渡されるはずだ。

 そして、「心の病をかかえており、療養のため」という名目で、国の外れへと追い出されるのだ。