そんなよくわからない内心を悟られないよう、ノアは落ち着いた口調で尋ねた。



「えっと、ニーナというメイドは、どんな人なんですか?」


「よく頭が回る利口な女性です。デュラン殿下には本気で惚れているようですが、それ以外のことについては、何をどうすれば自分の不利益にならないかをきちんと考えた上で行動する、見た目よりしっかりとしている印象です」


「つまり──お嬢様を陥れるような、露見すれば自分の身が危なくなるようなことはしない?でも例えば、お嬢様を陥れたい誰かに、高い報酬で雇われてる可能性もあるのでは?」


「ニーナはどちらかといえば、慎ましやかな暮らしを好んでいます。王宮の使用人部屋は華美すぎるともらしていましたから。高い報酬に釣られるとも考えづらいですが……」



 ミハイルはふと窓の外を見た。つられてノアもそうすると、外が薄暗くなってきているのがわかった。



「こちらで色々と探りを入れておきます。ノアさん、暗くなる前に帰るのが良い。送りますよ」


「いえ、大丈夫です。お時間をとらせて申し訳ありませんでした。必ずお礼はします」


「礼なんて……あ」



 代金を置き、立ち上がったノアをミハイルは引き止めて言った。