ニーナもミハイルとは、同じ平民の出だということもあり、友人とも呼べる仲だ。
だがその彼が、何故アリシアの肩を持つようなことを言うのだろう。
どうやらこの感じだと、デュランはアリシアが犯人であると信じきっていない。それどころか、ミハイルの発言により、犯人でない可能性が高いと思っているような気がする。
一気に不安が押し寄せてきた。まずい。
「ニーナ、顔色が悪い。もう少し寝ていた方が良い」
デュランが気遣うように優しい声で言う。
しかしニーナは、それに答えず、はっきりとした声で言った。
「あたしに毒を盛った犯人、アリシア様以外に有り得ないと思います」
「え?」
「あたし、アリシア様に嫌がらせを受けていたんです」
自分らしくない計画性の無い発言。
だがもう取り消せない。
「……階段から突き落とされそうになったり、掃除用の水をかけられたり」
ニーナの言葉を聞いたデュランの目に、怒りの色が宿るのがわかった。
「王妃になるはずの人間が、そんなことを」
正直に教えてくれてありがとう。デュランはそう言ってニーナの頭を撫でた。
これで、良いんだ。ニーナは自分に言い聞かせる。
だって彼女は『悪役令嬢』なんだから。



