一国の王子なのだから、交友関係が制限されるのは仕方がない。デュランもそのことを理解しており、本当はイルヴィスの言うことが正しいとわかっているはずだ。ムキになるのもその証拠だろう。
「それより。ニーナに毒を盛った犯人はわかったのか?」
デュランはわざとらしく話題を変えた。しかしニーナは、デュランがそう聞いてくるのを待っていた。
どう答えたものか……と困っているような表情をつくると、代わりに医師が説明してくれた。
「即効性の毒なので、飲んだ時間を考慮すると、アリシア様が淹れられたというハーブティーが怪しいのではないかと考えています。
もちろん、断定はできませんが」
医師はアリシアが犯人だと言い切るのを避けているが、デュランはどう考えるだろうか。
そう思ってデュランを見ると、彼は何か考え込むようにうつむき、あごを撫でていた。
「デュラン、様?」
「……」
何か気になることでもあるのだろうか。しばらく何も言わないデュランに、少し不安を感じはじめた頃、彼はやっと口を開いた。
「ミハイルは……違うと言っていた」
「え?」
そういえば先ほど、庭師のミハイル・テニエと話をしたというようなことを言っていた。



