その後、ニーナは宮廷医のもとへ運び込まれた。



「ニーナさんは大丈夫なんですか?」


「ええ。意識はあるようですので」



 アリシアに問い詰められた医師は、動じる様子もなく、メガネを押し上げながら答えた。

 背中まで伸びた長い髪を無造作にしばり、銀縁のメガネを掛けたこの男性は、ミハイルとどこか似通った雰囲気である。



「ただ、今はよく眠っているようなので、いったい何があったのか、アリシア様から事情をお聞かせ願えますか?」


「事情も何も……。ハーブティーを飲んだら突然倒れてしまって……」



 本当に訳が分からない。まさかミントが体に合わなったのだろうか。だが、ハーブティーを飲んだ瞬間倒れるなど聞いたことがない。



「茶を飲まないか、というのは貴女から誘ったのですね?」


「ええ」


「何故?」


「何故って……少しお話がしたいな、と」



 口ごもるアリシア。医師はふっと息を吐いた。



「ニーナを軽く検査した結果ですが……どうやら倒れた原因は、毒のようです」


「ど、毒?」


「毒です。致死性はそう高くありませんが、即効性のものです」



 何故毒が?まさかアリシアが淹れたミントティーに毒が入れらていたのだろうか。しかし、あの場にはアリシアとニーナしかいなかったのだから、毒など盛れるはず……