「小さいけどそこに椅子とテーブルがあるから座っていて」



 アリシアは部屋のすみを示して言う。

 それから少し迷った末に扉を閉じた。ここに閉じ込められた日以来、この扉を閉めるのが少し怖いと感じるようになっていた。

 だが今は一人きりではないので怖さはあまりない。



「そんな、あたしもお手伝いします」


「いいからいいから。ニーナさんは普段ハーブティーを飲んだりする?」


「いえ……。あの、ハーブティーってお薬みたいなものですよね?」


「まあ、そう思われることが多いわね。特にこの辺では」



 アリシアは、ティーポットにドライミントと茶葉を入れながら答える。



「でも、ハーブの効果とか難しく考えなくても、純粋に美味しいのよ」


「そうなんですか」


「もちろん好き嫌いはあるけどね」



 ひっくり返した砂時計の砂が落ちきったのを見届けて、温めた一つのカップにポットの中身を全て注ぐ。

 自分はついさっきイルヴィスと同じものを飲んだばかりなので、今回はニーナの分だけだ。



「はいどうぞ。お口に合えば良いけど」


「ありがとうございます。良い香りですね」



 テーブルに、いかにも高価そうな白くて綺麗なティーカップを置いた。

 ニーナはそれを恐る恐る持ち上げ、ゆっくり香りをかぐ。