今まで勝手に厄介者扱いしていたお詫び。


 もちろん、ニーナはアリシアにどう思われていたかなんて知るはずもないのだが、これはアリシアの気持ちの問題だ。



 こうやってお詫びの気持ちを込めて彼女にハーブティーを出すことで、漫画の世界にとらわれすぎていた自分と決別する。

 漫画のアリシアは最初ヒロインに優しくしていた。それでも和やかにお茶会をしたりはしていなかった。


 だからこうすることで、ここにいるニーナはニーナでしかなく漫画のヒロインとは別なのだ、と心から納得することができるような気がしたのだ。



「お茶……」



 彼女であればすぐにOKするだろう。アリシアはそう予想していたが、その予想に反してニーナは一瞬顔を曇らせた。

 しかし、どうしたのか聞こうと口を開きかけた時には、いつも通りの笑顔に戻っていた。



「嬉しいです。すぐに片付けてきますね」



 パタパタと足音をたてて走っていくニーナの後ろ姿を見送りながら、先ほどの表情は見間違いだったのだろうかと思う。




 他の人に見つからないようにということで、アリシアはニーナを給湯室まで連れてきた。

 ここならそうたくさんの人が出入りするわけではないし、誰かが入ってきても「掃除をしてもらっていた」と言えば良い。