イルヴィスはミントティーを味わうようにゆっくり飲んだ後立ち上がり、髪を結んだ。

 急いでいながらも、アリシアが淹れて渡した分のお茶はきちんと飲み干してくれるのが嬉しい。



「殿下、いつもお疲れ様です」



 部屋を出ようとするイルヴィスに、アリシアは後ろから声をかけた。


 この国が平和で、笑顔のあふれる場所なのは、間違いなく彼の働きがあってこそだ。そのことは最近ますます実感している。


 イルヴィスは振り返り、アリシアに向けて微笑を浮かべた。



「この頃は貴女が淹れるハーブティーのおかげで調子が良い。明日も楽しみにしている」



 そう言い残し、部屋から出ていった。



(……!そんな風に思ってくれていたのね)



 ハーブティーを淹れるのは趣味の延長線上であるが、それが少しでもイルヴィスのためになっているのなら、こんなに嬉しいことはない。



(それなら期待に応えないと。次はどんなハーブティーにしようかしら)



 ──この時のアリシアは、「次」が当然明日にでも訪れると、信じて疑いもしなかった。