きっとイルヴィスは、そのことを諌めるために、ニーナを同伴させてデュランを呼び出したのだろう。



『黙りなさい小娘』
『あなたのことはずっと目障りで仕方なかったわよ』




 頭に、夢で見たセリフが響く。



「あ、あの……わたしはこれで失礼します。デュラン殿下と先約があったのに、突然お邪魔してすみませんでした」



 一刻も早くこの部屋を出たい。これ以上ニーナといたくない。



「ああ……」



 うなずきかけて、ふとアリシアを見たイルヴィスが、ギョッとしたように目を見開いた。




「どうしたアリシア!?ひどい顔色だが」


「だ、大丈夫です。昨夜の疲れが出てきただけですから。失礼します」



 逃げるように執務室を出たアリシアは、しばらく速歩で歩く。庭に出たところでようやく立ち止まり深く深く息を吐いた。



 ──あの漫画のストーリーは、確実に動いているのだ。