デュランの言葉を、アリシアは決して否定しない。


 それでもニーナは、信じられないというように首をふる。



『だって、アリシア様がそんなことをするはずっ……』


『黙りなさい小娘』



 ピシャリと言い放たれ、ニーナはぐっと唇を噛んだ。




 アリシアは今まで優しく接してくれていた。こんなアリシアをニーナは知らない。




『どうして……』


『変なことを聞くのね。まさかわたしが、本気であなたに同情して優しくしてたとでも思ったのかしら?』



 そんなわけないじゃない、とアリシアは笑う。



『あなたのことはずっと目障りで仕方なかったわよ。どれだけ優秀なんだか知らないけど、何故メイドの分際でデュラン殿下から愛されているのよ。どうしてわたしのイルヴィス様に興味を持たれているのよ……!』



 静かに、まるで問い詰めるかのようにアリシアは思いを吐き出す。

 口元に浮かべ続けている笑みがどことなく不気味だ。



『わたしはね、婚約者であるはずのイルヴィス様に興味を持たれたことなんて一度もないの。婚約者というのは、立場上妃を選ばなくてはならないから仕方なく選んだそうよ。愛されることは期待するなとはっきり言われたわ』