(大丈夫大丈夫。全然平気だし……!こんなときこそ紅茶を淹れて気持ちを落ち着けないと)



 無理やり気をしっかり持とうとするも、手の震えが収まらない。



 暗く皆が寝静まった病室で、一人ベッドで雷鳴に怯える夜。怖くて仕方ないが、そばで「大丈夫だよ」と慰めてくれる母はいない。これは前世の──それもまだだいぶ幼かった頃の記憶だ。

 前世では幼い頃から入院を繰り返していた。その時体験した恐怖は、成長しても忘れられはしなかったし、ましてや生まれ変わっても消えていない。



 手を震わせながらも、アリシアはティーポットに茶葉を入れてお湯を注ぐ。が──



(あ、ポットもカップも温めてない)



 紅茶を抽出する際の、いつもなら絶対に忘れないような行程もとばしてしまっていた。本当に動揺している。


 それでも一応、いつも通り綺麗な色の紅茶が出来上がった。味も普通だ。


 アリシアは、温かいものを飲んだことで少し気持ちが落ち着いたような気がした。



(大丈夫、きっと雷はすぐおさまるわ。少し冷えるけど、こうして温かい紅茶のカップを持っていたらだいぶましだし)



 ふうっと息を吐き出した瞬間、またピシャリと外が光り、ゴロゴロと大きな音がした。



「いやっ!」