(あれ、ここって)



 改めてランプで辺りを照らすと、アリシアは閉じ込められたこの部屋の正体がわかった。



(なんだ、いつもの給湯室。暗くてわからなかったわ)



 ハーブティーを淹れるときにいつもお世話になっている部屋だ。暗いだけでずいぶん印象が違う。この部屋なら、城で働いている人も使う場所だから、最悪の場合でも明日には誰かが来てくれるだろう。


 そうとわかれば、慌てたって仕方がない。外が雨のせいか少し冷える上、転んだ拍子に靴が脱げてしまったらしく、足から床の冷えがダイレクトに伝わってくる。何か温かいお茶でも淹れようか。


 アリシアは先ほど感じた不安な気持ちなど忘れたかのように、どこか機嫌よく紅茶の入った瓶を漁り始めた。

 時間をかけて、無難なダージリンティーを手に取ったその時だった。



 小窓から見えていた真っ暗な空が、突然真昼になったかと思うほどの明るさで光った。そして数秒後には、ゴロゴロと大きな音が響いてくる。



「ひっ……か、雷?」



 心臓が大きく跳ね上がり、思わず耳をふさぐ。



(嫌……雷は本当にダメ)



 雷は苦手だ。それこそ前世からずっと。

 記憶を取り戻す前から怖かったが、取り戻してからはその記憶も相まってさらに苦手になった。