ロベルトはそんなことを思い出し、妙な胸騒ぎを覚えた。



「ロベルト。いたのか」


「兄上」



 サラに気を取られていたロベルトに、兄イルヴィスが近づいてきた。



「予定より早いが、夜会はそろそろ切り上げることにした。外の天気が悪化してきた」


「そうですか」



 相づちをうったロベルトは、一つの可能性を思いつき尋ねた。



「もしかしてアリシア嬢はもう帰らせたのですか?見当たらない」



 それならここにいない理由も納得がいく。しかし、イルヴィスは訝しげに眉をひそめた。



「見当たらない?」



 イルヴィスは先ほどロベルトがしたのと同じように会場を見渡す。その表情に、しだいに焦りの色が出てきた。



「いつから見当たらなかった?」


「さあ。いないと思ったのは少し前──」


「すまない、ロベルト。会場を頼む」


「は……?」



 ロベルトの答えを聞く前に、イルヴィスは走り出した。



「いや頼むって言われても……」



 頼むのなら、ロベルトより適任の側近がいくらでもいる。それを考える暇がないほど焦っているのか。


 ロベルトはイルヴィスの側近の一人に適当に説明をして、自分は兄の後を追った。