「アリシア、改めて言う。私と一曲踊って頂けないだろうか」


「は、はいっ……!喜んで」



 アリシアは意を決して、差し出されたイルヴィスの手を取る。
 


(大丈夫、みっちり練習してきたし、イメージトレーニングもばっちり)



 一つうなずいて顔を上げると、イルヴィスの美しい顔が間近にあった。どうしても密着するような形になるのだから当たり前か。

 目が合うと、イルヴィスは薄く微笑み、アリシアの耳元で囁いた。



「力を抜いてリラックスしろ。純粋に踊るのを楽しめば良い」



 音楽が流れる。アリシアは一つ深呼吸し、音楽に合わせて何度も練習を重ねてきたステップを踏んだ。

 踊り始めてしまえば、体は案外簡単に動いた。練習の成果もあるだろうが、イルヴィスの動きが講師に負けないくらい上手く丁寧で、こちらも動きやすい。



(……ちゃんと踊れるとやっぱり楽しいな)



 あっという間に一曲終わってしまった。



「上手いじゃないか」



 イルヴィスが感心したように言う。



「ありがとうございます」


「早く貴女のことを紹介して回りたいところだが、せっかくだからもう一曲どうだろうか」


「もちろんです」