「とてもお似合いですお嬢様!」



 アリシアにドレスを着せたメイドが、両手を合わせて微笑んだ。


 目の前の鏡には、淡い紫のドレスに身を包んだアリシアが映っている。

 そのドレスは、控えめなフリルと、銀糸で施された刺繍により、上品さが演出されている。姉からもらったシルバーのネックレスにも、イルヴィスからもらった髪飾りにもよく合っている。

 普段はハーフアップにしているターコイズブルーの髪も、今日は編み込んで一つにまとめてある。



「本当?おかしくない?」


「もちろん素敵です!まるでお嬢様が着るべくして生まれてきたドレスのようです」


「それは大袈裟よ」



 アリシアはくすくすと笑いながら、リラックスしている自分に安心する。


 この二週間、必死の思いでダンスの練習をしたり参加者の名前を覚えたりしてきた。

 礼儀作法も、講師に厳しく鍛え直された。


 アリシアはあまり器用な方ではないので、興味のないことを覚えるのは苦手だ。それでも追い詰められていたからか、どうにかして課題をこなしていくことができた。


 だが、準備が進んでいくと同時に不安も大きくなってきた。