黙っていれば、高貴で澄ました孤高の令嬢のように見える。だが、その人懐っこさを感じさせる笑顔で、とっつきにくさが相殺されているのだろう。



「何か必要なハーブがありますか?」



 ミハイルはアリシアに尋ねる。

 彼女は、婚約者である第一王子に、ティータイムの準備役を任されているのだ。



 そのティータイムのため、毎回自分の得意分野であるハーブティーを用意しているそうだ。その中で不足しているハーブをミハイルにもらいにくることもある。


 そんな努力のかいあり、王子(イルヴィス)には満足してもらえている。そう彼女は言っていた。

 しかしミハイルに言わせれば、多分イルヴィスはアリシアと一緒にティータイムを過ごせている、というだけで満足している。お茶や菓子については、よっぽど口に合わない限り文句は言わないだろう。


 それは、しばしば「氷のよう」とも評されるイルヴィスの冷たい表情が、アリシアの前では随分と穏やかであることからも容易に想像できる。



(まあ、アリシア様は少しも気づいていらっしゃらないだろうが)



 何せ、イルヴィスの婚約者に選ばれてしばらく、婚約者である王子を放ったらかして、このハーブ園に入り浸っていた女だ。普通なら、王子という地位にも、あの美しい容貌にもすぐさま惹かれそうなものなのに。