そっと開けると、中には白いアネモネのような花を型どった、繊細で美しい髪飾りが入っていた。



「これは……?」


「街で見つけた。それが一番貴女に似合いそうだった」


「そんな、いつの間に」



 一緒に街を回っていたのに、このようなアクセサリーを買う様子はなかった。少し考えてようやく思い出す。



「あ、もしかして、わたしが蜂蜜を選んでいた時……」


「ああ、隣の店で。ペンダントにしようかとも迷ったが、ペンダントはいつも良い品を身につけているようだから、別の物をと思って髪飾りにした」



 アリシアの胸元で輝きを放つ、姉たちからもらったシルバーのペンダント。気づいてもらえていたようだ。



「素敵……ありがとうございます」



 イルヴィスが自分のために選んでくれた。そう思うと、嬉しさで胸のあたりがふわっとあたたかくなるような気がした。


 無意識に笑みをこぼしながら、アリシアは髪飾りの入った箱をギュッと握りしめた。



「大切に使います」


「二週間後の夜会の時にでも着けてくれ」


「はい……は、い、え……夜会?二週間後?」



 いきなり出てきた「夜会」という単語に、アリシアは現実に連れ戻された。そしてそれと同時に血の気が引いた。