「わたしは、殿下と過ごす時間を苦痛だなどと思っていません。お茶の時間だって、初めはとても緊張したけれど、今はむしろ楽しいです」
正直に今の気持ちを伝えてみる。
するとイルヴィスは、困ったように眉をひそめ、口もとに手をやりまた目をそらした。
それを見たアリシアはようやく気がついた。
(あ、もしかして……すっごく照れてる?)
自分との時間が楽しいという、アリシアの言葉が嬉しくも照れくさくて、反応に困っているのではないだろうか。
もしそうだとしたら、何となく嬉しい気がした。
そして嬉しさついでに、いつもは言い出せない気持ちも、伝えておきたくなった。
「殿下、今さらですが、わたしを婚約者に選んでくださってありがとうございます」
「……唐突だな」
「ふふ、すみません。でも正直、自分では何故選ばれたのか不思議なくらい、妃としての素養は乏しいと感じています。ですが、殿下がわたしの何かを見込んでお選びくださったのですから、殿下の名に恥じないよう努力いたします」
一気にしゃべったアリシアは、ふうと息をついた。
だから今後、婚約破棄などという展開はやめてほしいです……とまではさすがに言えないが。