「……というわけで、わたしのオススメの店です」



 アリシアたちが入った店は、大きな通りにある、可愛らしい外観のカフェだった。

 同じカフェでも、Cafe:Lilyとはかなり雰囲気が違う。


 Cafe:Lilyが、常連客が集い静かに過ごす、知る人ぞ知る店だとしたら、ここは流行りものが好きな人が集まり、わいわいおしゃべりを楽しむ店だ。


 イルヴィスは、慣れない店の様子を興味深そうに観察している。その横顔は、平民らしい格好をしているのにも関わらず、さながら一枚の絵画のように綺麗だ。


 思わず見とれてしまっている間に、注文していた品が運ばれてきた。

 甘いリンゴとバターの香りを漂わせているアップルパイ。



「ここのアップルパイは絶品なんですよ」



 この店は庶民向けではあるが、学園に通う令嬢たちの中にも、噂を聞きつけてお忍びで行っていた者も大勢いた。

 もちろんアリシアだって、当時何回も足を運んだものだ。



「いただきます」



 サクサクのパイ生地にとろとろのリンゴ。口の中で濃厚なバターとシナモンの香りがいっぱいに広がる。

 久しぶりに食べたが、記憶していた通りの美味しさだ。