「……深く、考えすぎんでええんちゃう?」


人間、誰だって過ちを犯す。


それが遅かれ、早かれ、必ず、犯すのだから。


「まぁ、君の嫁はんが僕の娘やから、こんなことを言えるのかもしれん。でも、夫婦は寄り添い、支え合うものや。君一人が、抱え込まんでええと思うよ?」


「……」


「確かに、妻を守るために夫はいる。けど、妻だって、夫を支えるためにあるんやから。なぁ?ユイラ」


「ええ。私が助けになれているのかは、判らないわ。でも、いつだって、健斗の助けになりたいと思ってる」


長年、連れ添った妻。


愛しいという想いは絶えることなく、日に日に増す。


「何十年とユイラを連れ添った僕でもわからんのや。夫婦とは、一体、何か、なんて」


分かる人間が、果たしているのだろうか。


二人が存命のうちに。


「お互いがなくてはならない存在で、唯一だと感じることはあるだろう。でも、本当に、相手の大切さを感じるのは相手を失ったときだ。相手を失ったとき、初めて、人は気づくことができるんだよ」


僕の父親が、そうだった。


僕の父であり、沙耶の祖父でもある雄斗の息の根を止めたのは、僕。


復讐という名で、僕は父の息を止めた。


それが、僕の罪。