立花さんが眼を見開いた。

胸の前で組まれた両手が小刻みに震えている。

「なんだ。震えてるのか?自分のしたことだろう。今更遅い」

「ゆ、許して……凌央だけには、言わないで」

……今まで強気で恐かった立花さんが、急になんの力も持たないか弱い存在に見えた。

それから思った。ああ、こんな行動を取ってしまうほど、彼女は凌央さんを好きなんだって。

何だか頭がズキズキと痛む。それから……胸も。

圭吾さんは力なく項垂れた立花さんを一瞥すると私を見た。

「……帰るぞ、彩」

「……はい」

とうとう床に座り込んでしまった立花さんに、私はどうすることも出来なかった。


*****

「なに考えてるんだ?!」

「ごめんなさい!」

家に着くなりクルリとこちらを振り返り、腰に両手を当てた圭吾さんが私を見据えた。

ダイニングテーブルに乱暴に置かれた車のキーが、カシャンと尖った音を立てる。

「……」

「あの、どうして私の行き先が分かったんですか?」

今聞くのもどうかなと思ったけど案の定、圭吾さんは益々ムッとしたように顎をしゃくった。

「ここにメモを置きっぱなしにしていたからに決まってるだろう。僕は魔法使いじゃない」

「あっ……」

「電話にも出ないし」

「あ、電話……バッテリー切れみたいです……」

バッグの中から慌てて取り出したスマホは完全に動かなかった。

「なんのための携帯なんだ」

そう言われると元も子もない。

「重ね重ねほんとにすみません」

「……」

まだ怒り足りないのか圭吾さんは相変わらずムッとしている。