恋愛ノスタルジー

その、裸婦。

私が?!

眼を見開いた私を立花さんは意地悪な顔で眺めた。

「あなた、凌央が好きなんでしょ?隠したって無駄よ。私の目は誤魔化せないわ」

立花さんが私に一歩近付いた。

「アシスタントは画家を助けるものでしょう?早く脱ぎなさいよ」

その射抜くような眼が怖くて思わず一歩下がった私に、立花さんは尚も距離を詰めた。

「脱ぎなさいよ、早く」

「……待ってください、わ、私、」

「私は卑怯な人間が嫌いなのよ。あなたみたいに何の不自由なくぬくぬくと育った常識はずれのお嬢様なんて」

立花さんがギュッと眉を寄せて私を睨んだ。

「きゃあっ!」

心臓が止まるかと思った。

彼女が私のブラウスを掴んだかと思うと、グッと引き寄せて次の瞬間には突き飛ばしたからだ。

華奢な彼女がまさかこんなに乱暴な行動に出るとは予想していなくて、私は大きく体勢を崩した。

後頭部と背中にガツンと衝撃が走り、本能的に眼を閉じた。

「凌央の為よ。早く脱いで裸婦のモデルになりなさい」

言うなり立花さんはテーブルの上の布を私に投げつけた。

……凌央さんの為に、裸婦のモデルに……。