久々に見た立花優さんは相変わらず冷めた眼で私を一瞥すると、スタッフルームというプレートの貼られたドアを手の平で指した。
「どうぞ」
せかされるように促され、訳も分からず部屋に入る。
誰もいないその部屋にはデスクが二台向かい合わせに配置してあり、画材道具の棚が一辺の壁に寄せられていた。
それに加えて数脚のパイプ椅子が反対側の壁に並べてある。
……凌央さんは会議って言ってたけど……ここに来るのだろうか。
私は立花優さんを振り返り、詳しいことを聞こうとした。
ところがその前に、
「あなた、峯岸グループの末娘なんですってね。しかも貿易会社の社長と結婚するんでしょ?」
振り返って見たその顔にはうっすらとした笑みが浮かんでいて、美しい瞳は侮蔑の色に満ちている。
「どうして知ってるの?とでも言いたげな顔だから教えてあげるけど……昨日、尊に聞いたのよ。私たちは大学時代の友人でね」
服の中に冷や水を流し込まれたような感覚に、思わず身体がビクンと脈打つ。
尊……尊って確か、銀座のイタリア料理店ブリッラーレのオーナーの結城尊さん……。
「あなたオープン記念パーティーに凌央と行ったんでしょう?」
……そうだ。
あの時確か尊さんは私に、『なんだかアナタ、どこかで見たことある気がする』って言ってたっけ……。
でも私には尊さんと会った記憶がなくて……。
「尊はね、思い出したのよ。依頼を受けてセレブの婚約パーティーに料理を作りに行ったのを。最後に挨拶をしに厨房に来たあなたはドレスアップしていたからなかなか思い出せなかったみたいだけど」
そうだったのかという思い。
「どうぞ」
せかされるように促され、訳も分からず部屋に入る。
誰もいないその部屋にはデスクが二台向かい合わせに配置してあり、画材道具の棚が一辺の壁に寄せられていた。
それに加えて数脚のパイプ椅子が反対側の壁に並べてある。
……凌央さんは会議って言ってたけど……ここに来るのだろうか。
私は立花優さんを振り返り、詳しいことを聞こうとした。
ところがその前に、
「あなた、峯岸グループの末娘なんですってね。しかも貿易会社の社長と結婚するんでしょ?」
振り返って見たその顔にはうっすらとした笑みが浮かんでいて、美しい瞳は侮蔑の色に満ちている。
「どうして知ってるの?とでも言いたげな顔だから教えてあげるけど……昨日、尊に聞いたのよ。私たちは大学時代の友人でね」
服の中に冷や水を流し込まれたような感覚に、思わず身体がビクンと脈打つ。
尊……尊って確か、銀座のイタリア料理店ブリッラーレのオーナーの結城尊さん……。
「あなたオープン記念パーティーに凌央と行ったんでしょう?」
……そうだ。
あの時確か尊さんは私に、『なんだかアナタ、どこかで見たことある気がする』って言ってたっけ……。
でも私には尊さんと会った記憶がなくて……。
「尊はね、思い出したのよ。依頼を受けてセレブの婚約パーティーに料理を作りに行ったのを。最後に挨拶をしに厨房に来たあなたはドレスアップしていたからなかなか思い出せなかったみたいだけど」
そうだったのかという思い。


