『はあーい。じゃあすぐ送ります』
バクバクと、うるさいくらいに心臓が脈打ち始める。
しばらくして着信音が鳴り、私は意を決して番号をタップした。
そんな私の耳に静かで落ち着いた声が聞こえてきた。
『もしもし。お久し振りです。以前うちの榊の自宅でお会いした立花優です』
「……お久し振りです」
動揺する私とは対照的に、立花さんは淡々と続ける。
「榊からの伝言です。……榊が経営している絵画教室があるのですが、モデルがインフルエンザでダウンしてしまいました。つきましてはその代役を峯岸さんにお願いしたいそうです」
……モデル?
凌央さんが絵画スクールを経営しているのは聞いている。
でも今までに絵画スクールでの仕事を頼まれたことなど一度もない。
「あの……私がモデルですか?」
『はい。デッサンモデルです。場所ですが渋谷区神宮町三丁目……』
立花さんの口から出た住所をメモ用紙に書き留めると、私はゆっくりと息を吐き出した。
「午後八時半にロワールビル六階榊アートスタジオ……」
早くしなくちゃ間に合わない。
私はバッグを掴むと玄関へと急いだ。
****
凌央さんの自宅から渋谷にあるロワールビルは、一度乗り換えをすると三十分弱で到着することができた。
「お待ちしておりました。そろそろ生徒の皆さんがいらっしゃるので、こちらのお部屋で支度をお願いします」
バクバクと、うるさいくらいに心臓が脈打ち始める。
しばらくして着信音が鳴り、私は意を決して番号をタップした。
そんな私の耳に静かで落ち着いた声が聞こえてきた。
『もしもし。お久し振りです。以前うちの榊の自宅でお会いした立花優です』
「……お久し振りです」
動揺する私とは対照的に、立花さんは淡々と続ける。
「榊からの伝言です。……榊が経営している絵画教室があるのですが、モデルがインフルエンザでダウンしてしまいました。つきましてはその代役を峯岸さんにお願いしたいそうです」
……モデル?
凌央さんが絵画スクールを経営しているのは聞いている。
でも今までに絵画スクールでの仕事を頼まれたことなど一度もない。
「あの……私がモデルですか?」
『はい。デッサンモデルです。場所ですが渋谷区神宮町三丁目……』
立花さんの口から出た住所をメモ用紙に書き留めると、私はゆっくりと息を吐き出した。
「午後八時半にロワールビル六階榊アートスタジオ……」
早くしなくちゃ間に合わない。
私はバッグを掴むと玄関へと急いだ。
****
凌央さんの自宅から渋谷にあるロワールビルは、一度乗り換えをすると三十分弱で到着することができた。
「お待ちしておりました。そろそろ生徒の皆さんがいらっしゃるので、こちらのお部屋で支度をお願いします」


