恋愛ノスタルジー

父は凄い人で、私は本当に幸せな暮らしをしてきた。

だから、父の決めた相手と結婚しなきゃ約束を破ることになってしまうもの。

「ねえ、彩。あんたさあ、今時親の決めた相手と結婚するとか有り得なくない?」

美月は心底呆れ顔だ。

「でも……約束だし……それに今まで付き合ってきた人って、私じゃなくて峯岸の家柄とかお金とかが目当ての人が多くて」

そう。私だって少ないながらも恋愛はしてきた。

でも恋人になった人は付き合って程なくすると、本性を表し始めた。

『学費がない』なんてのはまだマシな方だ。

『クリスマスには君と旅行に行きたい。でも親に仕送りしてるから予算がなくて』とか、『妹の彼氏がロクでもない男で、妊娠させられた挙げ句有り金持って逃げられたんだ。助けてくれないか』とか。

一番酷いのは『俺、誕生日に車が欲しい』だった。もう、ストレートすぎる。

「でも、私見る眼がなくて騙されてばっかりだし、これ以上失敗したくないし……」

少し視線を上げて美月を窺うように見ると、彼女は盛大に溜め息をついて、カップをカチャリとソーサーに戻した。

「25歳にして恋愛から逃げたわけだ。けど結局、夢川圭吾だってアンタの後ろにある峯岸グループ見てるだけじゃん。それにハッキリ言うけどお見合いしてすぐ相思相愛になれると思うのが甘い。恋愛映画の観すぎ」

ハッキリ逃げたと言われたら耳が痛いけど、正にその通りだ。

「そりゃあ私だってすぐにそうなるなんて思ってないよ……」

ゴニョゴニョと言い訳がましく呟きながら、私は圭吾さんの言葉を思い返した。

《……あなたに一目惚れしました。僕と結婚してください》