「はい」

沢山の人に捕まってしまっている凌央さんをたまに眼で追いながら、私はアキさんと一緒に尊さんのお料理を沢山頂いた。

「彩ちゃん、ワイン、白でいい?」

「アキさん、座ってて。私が貰ってくるよ」

「足なら気にしないで。少し痺れてるだけだから」

でも……。

「これはね、俺の罪の名残なんだ」

一旦ここで言葉を切ると、アキさんは思い切るように笑った。

それからゆっくりと続ける。

「話すと長くなるからまたの機会にするけど、俺は昔……あまり行いが良くなくてね。その罪の名残なんだよ、この足は。それから……そんなどうしようもない俺をすくい上げてくれたのが、凌央なんだ」

「凌央さんが……?」

「うん。でもアイツは……俺の足がこうなったのは、自分のせいだと責めててね。だからアイツは俺のギャラリーでしか画を売らないんだ。俺が一生、食いっぱぐれないようにね」

「おいアキ!つまんねぇ話、してんじゃねぇよ!」

「うわぁっ」

突然後ろから、凌央さんがアキさんの首に腕を回して引き寄せた。

それからそのまま私を見てニヤリと笑う。

「彩、食べてるか?」

「……」

ああ、そんな仕草でさえ、私の胸は踊る。

「ん、どうした?」

不思議そうに少し眉を上げた凌央さんに、私は我に返ると首を振った。

「……どうもしないですよ」

「そっか。飲むばっかで……腹減った!」

「じゃあ今からいっぱい食べてください。お料理を取ってきますね」

私は席を立つと、料理の並ぶ壁際のテーブルへと足を進めた。

凌央さんを好きって気持ちが、今日もまた強くなったのを感じながら。