ザワリとして皆が一斉に振り返った。

「おお、君がこの素晴らしい画を?」

仕立てのいいスーツに身を包んだ年配の男性の声の後に、和装した美しい女性が瞳を輝かせて凌央さんを見上げた。

「あなたがRyo.Sakaki……!想像していたよりもずっと素敵だわ!この間まで新宿のギャラリーで開かれていた個展、画を購入したあとも毎日通ったのよ」

そう言ってすり寄るご婦人に、凌央さんは爽やかな笑みを見せた。

「それはありがとうございます。そろそろお礼状がお手元に届く頃かと存じます」

「まあ!楽しみだわ」

「尊君に聞いたが、画材の開発販売の会社経営をされているとか」

「はい。RAコーポレーションという会社を経営しております」

「名刺をいただけるかな?」

たちまちのうちに、凌央さんをパーティー客が取り囲んだ。

……なんか、オーラを感じてしまう。

それにこの沢山の人の中でも、一際彼は異彩を放っている。

……やっぱり凄い人なんだ、凌央さんって……。

「なんて顔してるのよ」

凌央さんを囲む輪から遠ざかった私に、尊さんが苦笑した。

やだ、どんな顔をしていたんだろう
私。

「凌央ちゃんはね、あの有名な《新澤輝一郎絵画コンクール》で新澤賞を受賞したのよ。若冠15歳にしてね」

《新澤輝一郎絵画コンクール》って、確か三年前に誠二叔父様が奨励賞に輝いた絵画コンクールだ。