どうでもいいだろ、と言いたげな口調だったけど、私にしたら凌央さんに『可愛い』と言われたのが嬉しくて胸がドキドキと煩かった。

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銀座一丁目駅に程近い場所に、凌央さんの友人の店はあった。

店の名前である《brillare》ブリッラーレとは、確かイタリア語で輝くという意味だ。

大きな両開きの美しいドアの中は、更に美しかった。

広々とした部屋の中央には白いグランドピアノが置かれ、そのはるか上には特大のマリアテレジアシャンデリアが無数のクリスタルを反射し、幻想的に輝いている。

中央部分を開けて広々としてはいるものの、テーブル同士は決して近くなく、圧迫感は微塵もない。

「凌央さん……凄く素敵なお店ですね」

「褒めるなら本人に言ってやれ。尊!(たける)」

一番奥のテーブルに料理を運んでいた男性が、凌央さんの声に顔をあげた。

それから嬉しそうに口を開き、両手を広げてこちらに歩を進める。

「あっらー!凌央ちゃん!来てくれたのねっ!」

……見た目はまるっきり男で……しかもイケメンだけど……。

「あら、なにこの娘。凌央ちゃんの彼女?」

尊さんが、凌央さんの隣に突っ立っていた私を見た。

「ちげーよ。こいつは俺のアシスタント」

「初めまして。とても素敵なお店ですね。一歩入ってすぐに感動しました。私、凌央さんのアシスタントをさせてもらっています峯岸と申します」