****

定時後。

私は今日やるべき仕事をすべて終わらすと、凌央さんの自宅へと向かった。

午後七時。

「凌央さん……本当に私も行っていいんですか?」

私は戸惑いつつ、バスルームから出てきたばかりの凌央さんを見上げた。

「いいんだって!アキも来るし、ギャラの代わりに飲み食い自由だからな。思いきり食っとけよ」

大きなバスタオルで身体を拭いた凌央さんが、ダイニングキッチンの椅子にかけていたシャツに袖を通しながらコクコクと頷く。

ああ、一瞬だったけど……裸の上半身が……筋肉が逞しくて素敵。

なんでも今日は、友人のイタリア料理店のオープンパーティーなのだそうだ。

……良かった……今日、ワンピースを着ていて。

峯岸グループ本社は服装に規定がなく、役職付きや営業部でない限り常識の範囲であればジーパンでも構わない。

見れば今日の凌央さんは、ネクタイこそしていないがネイビーのシャツと濃いブラウンのジャケットを合わせ、シックにまとめている。

髪もワックスでいつもより落ち着いた感じにセットしてるし……カッコいい。

「行くぞ」

「あ、待ってください。メイク直しますから」

「タクシーがもう来るんだ。そのままでも可愛い可愛い!」

「嫌ですよっ!凌央さんがかっこよくキメてるのに、一緒にいる私がメイク直しもしてないなんて……ありえません!」

「分かった分かった!」

両手をあげた降参のポーズでそう言うと、凌央さんは私を見てクスリと笑った。