だからお願い。

圭吾さん、今だけ私を好きな人といさせてね。

私はキッチンの椅子にかけていたブランケットをそっと圭吾さんに掛けると、静かにその場を後にした。


****


翌日。

圭吾さんの朝食を作りそれにラップをかけると、私はいつもより二本早い電車に乗って出勤した。

今日は朝イチでモデルハウスに飾る雑貨インテリアを夢川貿易に取りに行く予定だ。

昨日、雑貨選びは終わっているから夢川貿易の倉庫からモデルハウスに運ぶだけなんだけど、後の予定がギッシリ詰まっている。

丸の内線に乗り換えようとしていたところでちょうど成瀬さんから電話がかかってきた。

『おはよ。夢川貿易の雑貨輸入担当の中西さんからメールがきてた。どうやら昨日選んだ雑貨をうちの倉庫に搬入してくれたみたいだね。なんでも社長命令で』

嘘。

「え、そうなんですか?!昨日は圭吾さんとはすれ違いになってしまって……知りませんでした」

信じられなかった。

圭吾さんが……?どうして?

成瀬さんは続けて、

『敏腕社長のうえに気が利くわね、彩の旦那様は!てことでミーティングの前に車に積み込み作業を終わらせておこう。下の倉庫で待ってるからね』

「わかりました。後数分で駅につきますから、20分後に倉庫で」