慣れない感覚に仰け反り、反射的に圭吾さんの身体にしがみついてしまうもすぐ我に返った。

返ったけど……もう手遅れだった。

「ダメだ。逃がさない」

少しだけ首を横に振ると私をきつく抱き締め、圭吾さんは囁くような声で言った。

「……抱いたら……嫌か?」

その熱い声に、心臓が止まりそうになる。

「っそ、んな……」

止まりそうだった心臓が今度は忙しなく、痛いほど脈打つ。

裏腹に身体は硬直し、ピクリとも動かない。

「……本当は結婚式まで待とうと思ってたけど……待てそうにない。可愛すぎて、好きすぎて」

圭吾さんの言葉に力が抜けて、身体全体が沈みそうになる。

『可愛すぎて、好きすぎて』

こんな言葉、一生もらえないと思っていた。

親同士が決めた政略結婚で、仕事のようなものだと言った人がこんな言葉をくれるなんて。

「正直、自分で自分の事はまるで分かりませんけど……そんな風に言ってもらえるなんて嬉しいです」

「……」

少しだけ圭吾さんが身を離して私の瞳を覗き込んだ。

真近にある圭吾さんの眼が本当に綺麗で、たとえば今この瞬間が嘘だったとしても後悔なんかしない気がした。

でも、だからこそちゃんと伝えておきたい。

「圭吾さん、私みたいな何の取り柄もない人間を好きになってくれてありがとう」

すると圭吾さんが少し私を睨んだ。