嘘でしょ、どうしよう!

「言えないなら私が代わりに言ってあげるわよ。ほら、圭吾さんに代わって」

美月はこの非常事態に全く気付いておらず、スマホからは彼女の声が惜し気もなく流れ続けた。

「あれ?!彩?聞こえてるー??なんか自分の声が響くー……」

もう、美月のバカ!

……いや、私がバカだ。 

力なくスマホを拾い上げ、スピーカー機能を解除した途端、ヒョイッと携帯を奪われる。

「け、圭吾さんっ」

焦る私を斜めにチラリと見下ろすと、圭吾さんは視線を空中に移して口を開いた。

「白崎美月さん、先日はどうも。今から彩を抱くからご心配には及ばない。うん、うん。では会える日を楽しみにしてる」

は、はあっ?!

慣れた手つきで通話を終わらせた圭吾さんが、なぜか私のスマホを自分の着ているパーカーのポケットにしまった。

それから私の前にたち、黙ってこちらを見下ろす。

熱い顔が更に熱くなる中、なんとかこの場を取り繕おうと、私は圭吾さんを見上げて口を開いた。

「美月ったら冗談ばっかり……。あ、彼女は今帰省中なんです。実家は関西で四人姉妹で。多分姉妹仲良くお酒でも飲んで酔っ払ってるんだと思います。だからあんな事言ったりなんかして、きゃあっ!」

圭吾さんは最後まで私の話を聞かなかった。

それどころか私を引き寄せると、なんと素早く喉元に唇を押し付けてきたのだ。

水を飲んだばかりの圭吾さんの唇はヒヤリとしていて、あまりの驚きに思わず私は声を上げた。