「……分かってる」

圭吾さんの身体から力が抜けたのがわかった。

過去は変えられないとでも思ったのかも知れない。

「でもいつの間にか……本当に自分でも気付かないうちに私、圭吾さんの事ばかり考えるようになっていました。それで思ったんです」

ゆっくりと、そらされていた圭吾さんの眼差しが私に向けられる。

それを真正面から受け止めて続けた。

「この結婚は運命の結婚だったんだって。だって圭吾さん以外の人となんて考えられないもの」

月並みな言葉しか思い付かなかったけど、私は心を真剣に伝えたくて握っていた圭吾さんの手に唇を寄せた。

「好きです。あなたが誰よりも好き」

僅かに圭吾さんの唇が開いた。

それから、信じられないといったように眉が上がる。

「本当です。この気持ちは曖昧じゃないです。はっきりあなたが好きってちゃんと分かってます」

「彩」

「はい」

小さく私を呼んだ圭吾さんと私の声は同じくらい掠れていた。

それからゆっくりゆっくり、圭吾さんが私の唇に近付く。

近くなるにつれて伏せられる眼と傾く圭吾さんの頬。

ずっと見ていたい程素敵なのに、唇が触れた瞬間、私はキュッと眼を閉じた。

胸が破裂しそうな程高鳴る鼓動と、熱い彼の身体。

「今までごめん、彩」

僅かに離れた唇から圭吾さんの優しい声がこぼれる。

「大好きです、圭吾さん」

見つめ合うと、どちらからともなく私達は再びキスをした。

嬉しくて幸せで、涙が止まらない。

通じ合った想いに胸が一杯で、私と圭吾さんは離れられず、しばらくの間抱き合っていた。