重役達との会食の最中だったが堅苦しい集まりでもなく、そろそろお開きになる頃だった。

「彩?」

「彩じゃないわ。彩の友達よ。あまりにもあなたにムカついて吐きそうになったから我慢できずに電話したの」

……確かに彩はこんなにドスの効いた声は出さない。

俺は怒気を含んだ女性の声に耳を傾けるため、席を外した。

「恋人にプレゼントするアクセをあの子に選ばせたそうだけど……あなた、本当に気付いてないの?だとしたら究極鈍い。万死に値するわね。それとも、あの子の気持ちを分かってそうしたのだとしたらとんだドSね。どちらにしろ死んでもらいたいわ」

……万死……。

これが白崎美月との初対面(いや、まだ会ってはいないが)……俺に死んで欲しいほどキレている彩の友達の低い声に固まるしかなかった。

何も言えないでいる俺に、彼女は更に続けた。

「 もう彩を苦しめるのはいいかげんにして!夢川貿易が小判鮫のように峯岸グループにへばり付かなきゃ生きてけないならそれでもいいわ。けど、これ以上あの子を傷付けるのは許さない!その気がないならあの子に触れるな!」

女性にこんなにも激しく激怒されたことはなかった。

「もう私は彩の泣き顔を見たくないの。だから今日は新しい出逢いをセッティングしたわ。彩はね、自分じゃまるで気づいてないけど凄く純粋で可愛いの。どの男もほっとかないわ」