「わがまま言ってすみませんでした。」

「可愛いわがままですね。
 でもできれば最中は僕のことだけ見ていて欲しかった。」

 気づいて………。

「それでも僕を求めてくれたのは嬉しかった。
 もっとこっちに来て。
 また逃げられたら立ち直れません。」

 回された腕によって重なり合うほどに近くなった体。
 そっと頬を胸につけると、かろうじて「ごめんなさい」が口を出た。

「フフッ可愛いな。」

 桜川さんの発した言葉が友恵の心に溶けていく。

 可愛いと、綺麗だと、浮ついた言葉でも言って欲しかった。言われたかった。
 心から言ってくれているのが分かる桜川さんだからこそ……。

「私も側にいて欲しいです。」

 やっと言えた本音。
 回された腕がもっと近づくように抱きしめられて苦しくなる。

「ちょ、ちょっと。苦しい……。」

「ダメです。このまま。
 今日は離れたくない。」