逃げ出した先が暗闇だったとして意味も分からず逃げていた。
手に入れられたかもしれないぬくもりが幸せという名前だったのかどうかも確認できなかった。
それらを忘れるようにまた仕事に没頭していった。
「何よ。
また逃げ出したわけ?」
夜中の電話。
誰かと思えば理香子だった。
「悪かったわね。逃げたわよ。」
どうせ面白いことになってないかと連絡してきたんでしょ。
こんなに短期間で連絡をよこすなんて珍しいもの。
「敵前逃亡でしょ?
戦わずして逃げたわけ?」
戦ったわよ。
それを言えば理香子が喜びそうで自分から言いたくないわ。
「したの?」
「………。」
「したのなら許すわよ。」
理香子に許されなきゃいけないことなど何もない。余計なお世話だわ。
だいたい勘が良過ぎる。
腐れ縁って本当、嫌だ。
「今度こそ忘れる。」
「何、言ってるの。
出来るわけないじゃない。
今回は酔った過ちってわけじゃなかったんでしょ?」
嫌でも思い返すぬくもりと情熱的で衝動的な欲情………。
「あー!もう!思い出させないで!」
「それにしても離婚じゃなくて死別か……。
重いね。不倫のがマシじゃない。」
「マシじゃない!」
理香子はいつから不倫万歳!になったのよ。
「結婚くらいしてあげなさいよ。
可愛いじゃない。
『福田くん』にまで嫉妬しちゃって。」
どうして結婚になるのかという意思の疎通が危うい話し合いの時に言われたのだ。
「福田くんがいるからしたくないのですか?」
意味が分からない。
酔った私は福田くんに好かれてると嘘でも吐いたのか……。
「話し合いになると急に噛み合わなくなるから逃げることになるのよ。」
福田くんを引き合いに出すことが全く理解できない。
「桜川さんだっけ?
いい着眼点だと私は思うけど?」
理香子まで……。
面白がっているだけなんだから。
「嫌われはすれど好かれてるなんてないわ。」
「嫌いだったら独立する友恵についてこないでしょ。」
「私だってどうして来たのか分からなくて最大の謎なのよ。」
福田くんは友恵が直接誘ったわけじゃなかった。
亜里沙が「友恵さんとは違ったものを持っているから」と無理矢理半分に押し付けられた感じだった。
結果は亜里沙が言う通り福田くんは仕事もできるし自分に無いものを持っていて、今のお店の地盤を築いてくれた1人だ。
「福田くんは30代後半?」
「うーん。確かそんなところ。」
「その歳で女の影が無かったら男でしょ。」
「そっち!?
ま、私は仕事さえ今まで通りやってくれたら別にいいけど。」
「福田くんも可哀想にね。
こんなにぶちんに……。」
「福田くんは違うわよ。」
「福田くん『は』ね。
桜川さんとは?」
「………知らないわ。」
手に入れられたかもしれないぬくもりが幸せという名前だったのかどうかも確認できなかった。
それらを忘れるようにまた仕事に没頭していった。
「何よ。
また逃げ出したわけ?」
夜中の電話。
誰かと思えば理香子だった。
「悪かったわね。逃げたわよ。」
どうせ面白いことになってないかと連絡してきたんでしょ。
こんなに短期間で連絡をよこすなんて珍しいもの。
「敵前逃亡でしょ?
戦わずして逃げたわけ?」
戦ったわよ。
それを言えば理香子が喜びそうで自分から言いたくないわ。
「したの?」
「………。」
「したのなら許すわよ。」
理香子に許されなきゃいけないことなど何もない。余計なお世話だわ。
だいたい勘が良過ぎる。
腐れ縁って本当、嫌だ。
「今度こそ忘れる。」
「何、言ってるの。
出来るわけないじゃない。
今回は酔った過ちってわけじゃなかったんでしょ?」
嫌でも思い返すぬくもりと情熱的で衝動的な欲情………。
「あー!もう!思い出させないで!」
「それにしても離婚じゃなくて死別か……。
重いね。不倫のがマシじゃない。」
「マシじゃない!」
理香子はいつから不倫万歳!になったのよ。
「結婚くらいしてあげなさいよ。
可愛いじゃない。
『福田くん』にまで嫉妬しちゃって。」
どうして結婚になるのかという意思の疎通が危うい話し合いの時に言われたのだ。
「福田くんがいるからしたくないのですか?」
意味が分からない。
酔った私は福田くんに好かれてると嘘でも吐いたのか……。
「話し合いになると急に噛み合わなくなるから逃げることになるのよ。」
福田くんを引き合いに出すことが全く理解できない。
「桜川さんだっけ?
いい着眼点だと私は思うけど?」
理香子まで……。
面白がっているだけなんだから。
「嫌われはすれど好かれてるなんてないわ。」
「嫌いだったら独立する友恵についてこないでしょ。」
「私だってどうして来たのか分からなくて最大の謎なのよ。」
福田くんは友恵が直接誘ったわけじゃなかった。
亜里沙が「友恵さんとは違ったものを持っているから」と無理矢理半分に押し付けられた感じだった。
結果は亜里沙が言う通り福田くんは仕事もできるし自分に無いものを持っていて、今のお店の地盤を築いてくれた1人だ。
「福田くんは30代後半?」
「うーん。確かそんなところ。」
「その歳で女の影が無かったら男でしょ。」
「そっち!?
ま、私は仕事さえ今まで通りやってくれたら別にいいけど。」
「福田くんも可哀想にね。
こんなにぶちんに……。」
「福田くんは違うわよ。」
「福田くん『は』ね。
桜川さんとは?」
「………知らないわ。」