彼はとっても、心配性だ。

『ティッシュ持った?ハンカチ持った?』

『帰ったら、うがい手洗い、イソジン!』

『指切ったらダメだから、包丁持たないで!』

『変な人に声かれられたら、大声出して逃げて俺にすぐ連絡するんだよ!』

あなたは、お母様?

実の母親ですら、そこまで言わないよ。

ちょっとでも、咳をしたら
熱かな?アレルギーかな?って心配が止まらない。

そこまで、何にもできない人間じゃないのに、完璧に身の回りのことを全てしてくれる。

もともとだけど、もっとダメな人間になりそうで、たまに怖くなる。



彼とは、数合わせで行った合コンで知り合った。
彼は、客寄せパンダとして参加していた。

私は、特に彼氏とか?いらないし、夕飯代一食分浮くならまぁいいかぁぐらいで、あまり喋らず、たらふく食べていた。

みんな大いに頑張ってくれたまえ!

何度目かの席替え時、彼が隣に座った。
お互い適当に挨拶して、適当に喋ってるけど、私は手羽先に夢中。

甘辛いタレがたまらん♡

そんな私を、何故か気にいったらしく、
合コンから数ヶ月後カレカノの関係になった。

私は、基本無気力だ。
意思とか、やりたい事とか特になく、
流れに身を任せて生きている。

彼から、付き合おうと言われたのも、
居心地いい人だから、まぁいいかぁぐらいの軽〜いノリで付き合った。

その程度の私に、彼は尽くしすぎるほど尽くしてくれる。
それが正直申し訳ない。

そろそろ、彼を解放してあげないといけないのかな?
もっと彼にはふさわしい女性がいるはず。

彼には幸せになって欲しい。

多分、無気力の私がこんなに何かのことを考えたのは、はじめて。

『どうした?考え込んで。
もしかしてお腹痛い?仕事でなんかあった?俺なんかした?
俺が悪いならなんでも言って
全力で直すから
頼むから、別れるとか言わないで』

私は、どうしてこんなに好かれているのだろう?思い上がりかな?

考え過ぎて、気持ち悪くなってきた。
食べ過ぎだな、レバニラ。

ウゥ〜、気持ち悪いー
彼が心配そうに背中をさすってくれる。
だんだん落ち着いてきたけど、まだスッキリしない。

そこである事に気がついた。
生理いつ来たっけ?

カレンダーを見てみると、もともと生理不順だけど、それ抜きにしてもだいぶ来てないかも?もしかして?もしかする?

あまりにも私が、カレンダーをまじまじと見るので、察しのいい彼は感づいたみたい。

『今から、病院行こう!』

妊娠7週目だった。


超音波写真をもらって、待合室の彼に見せた。

じーっと写真を見つめ、大きな声で
ありがとう、ありがとうと泣きながら何度も言ってくれた。
そしてすぐに、お互いの両親に電話をして
婚姻届を提出した。

私と大好きな彼の元に選んで来てくれた、我が子。
愛おしくて仕方がない。

それからの毎日、彼の心配性がますます止まらなくなった。

妊婦とはいえ、運動不足はダメなのに
ちょっとでも体を動かそうものなら、
うるさいったらありゃしない。
そんな10月10日を経て、無事女の子が産まれた。


出産から1年後の今日結婚式を挙げる。

愛する家族に囲まれて、私は本当に幸せ者だ。

2人とも、
こんな何もない私を
選んでくれてありがとう。

私は、私の全てをかけて、
2人を幸せにすることを誓います。