「せんぱいは、私が、どれだけせんぱいを好きなのか分かってない…」
「…なんで、だよ…?」
「私は、ずっと『自分』を…本当の私を掬って欲しくて、歌ってた。でも、それを上辺だけ受け取ってそのまま流す人ばかりで、ちっとも胸の中にある寂しさっていう凝りは溶けなかった。ううん。益々硬化していったんです。でも…でも…せんぱいは、そんな私にずっと前から気付いてくれていたんでしょう?」
そこまで話したら、涙が込み上げてきた。
でも、今泣くことは許されない。
ちゃんと、ちゃんと伝えなくては。
じっとしたまま、私に抱き締められたままで耳を傾けるせんぱいのことを確認してから、私は次の言葉を1つ1つ噛み締めるように呟く。
「知らなかったとは言え…私の中でKAZUはヒーローでした。家族に相手にされず、それなのに柵に縛られたままの私の心を解放してくれたのは、ただ1人…他の誰でもないKAZU…だけだった…」
せんぱいは、そこまで話した私を抱き締め返して、息も出来ないほどきつくきつく自分の胸に引き寄せる。
自然と溢れた涙が、せんぱいの少し汚れてしまった制服の肩に染み込んだ。
「泣くな」
「泣いてない…」
「…お前が、好き過ぎて死ねそうなくらいだ。だから、そんな風に1人で溜め込んで泣くな」
せんぱいは、私の腕の中で静かにそう言った。
また1つ、溢れる涙。
それは、切なさの滴る涙じゃなくて、愛しさの小波からくる幸福感で満たされたものだった。



