「その…親父の兄貴は、俺に言ったんだ。『何か他に自分を解放してやれることを見つけろ』ってな。俺は言ってる意味が全然分かんねぇって跳ね除けた。けど、もう1回言われたんだ。…『薫、お前は弟に似て賢い。そして、誰よりも優しい。だから、負けるな』って」
せんぱいは一呼吸置くと、瞳を閉じた。
きっと、その時のことを思い出しているんだろう。
震えている背中に、無意識に力が篭もる。
暫しの沈黙…せんぱいは、意を決したように私の方を見て、こう切り出した。
「そんな時だ。街をうろついてたら、不思議なくらい耳に馴染んでくる声がしたのは。俺は、すぐにその声の方に足を向けた。…そしたら、すげぇ笑顔で、…楽しそうに歌ってるお前を見付けたんだ」
「…え…?」
いきなりの展開に、一瞬頭が真っ白になる。
だって、私が路上でライヴをしていたのは中学後半からで、大して多くない。
なのに、それを見ていただなんて…。



