湿った空気が頬を撫で、もうすぐ梅雨が近付いていることを感じさせるある日、担任が巨躯を教室の扉にぶつけながら入ってきた。 「今日は転入生がいるぞぉ! ほらさっさと座れぇ!」 無駄に声を張り上げながら、まだ立ち歩いている生徒らに着席を促す。 (転入生……?) 滝は鬱陶しくはねた前髪を分けながらそう思った。 こんな微妙な時期に転入生が来るのは珍しいからだ。 どうやら他の一部分の生徒も滝と同じことを思ったらしく、首をひねっている。