「うわぁああああああ!!!」


耳に届く、悲痛な叫び声。
目の前に転がる、骸。


いつからだろう。
人を殺めても、何も思わなくなったのは。


依頼主に電話をかける。
相手が電話に出たところで、一言。


「……任務完了」


それだけ告げて、電話を切る。
無駄話はしない。


家への帰り道を歩く。


私は、浅葱(あさぎ)。
世界一の殺し屋、とも言われる。


浅葱、というのは俗称だと思われているらしいが、本名だ。


鈴堂 浅葱(りんどう あさぎ)。
それが、私の名前。


今は現代。
もちろん、人殺しなど許される訳がない。


見つかれば、即死刑だろう。
私はそれだけの人を、殺めた。


見つからないのは、私が完璧だから。
何も残さない。


それでもって、目撃者を出す事もなく、ましてや関係のない者を殺すこともない。


それが、私が殺し屋稼業をやる上での最低限のルールだ。


だが、誰にも見られることなく人を殺める事ほど難しい事は無い。


慎重に、張り詰めてやらなければ、アウト。


私はそれを守っているお陰で、目撃者が出た事は無い。


小さな神社を見つけた。
こんな所に、神社があっただろうか。


殺し屋の私が、願うなんて事はしないが、一応お賽銭は入れておいた。


この神社に祀られているのは、時の神。
時を操る、神。


一体どんな人が、何を、願いに来るのだろうか。


不思議でならないが、この小さな神社には、いつも鶴が飾られている。


そして、必ず前日とは色が違う。
誰かが、毎日置きに来ているのだろう。


一体、何を願うのだろうか。