すると、森緒ちゃんはベッドの傍に置いてあった円椅子に腰をかける。

一息おいて、自分を見た。



「みんな、本当は優しいよ。華は怖がらんでもいいんやで。
ちょっとやそっとで機嫌悪くなる人なんて、放っときな。付き合っとったら、キリないよ」

「でも…」

「角野さんと終わりたくないんやろ。ほら、結局は華だって優しいやん。って言うより、お人好しなだけか」



はははっ、なんて軽快に笑う。

そうか、自分は神経質になりすぎていた。

この先何十年と生きていくのだ。

もっと気楽にいかねば、身がもたない。

彼女に教えられたのは、これで二度目だ。

自分が堕ちそうな時、必死に引き上げようとしてくれる。

自分が駄目になれば、ここぞというタイミングで出くわしてくれる。

これは、たまたまではない。

出会いには確かに意味がある。

森緒ちゃんとも。

角野先輩とも。

そして、あの人とも。






第3章*第5話に続く。