そのあと須藤先輩は自分の教室に戻っていって、昼休みはあと5分。中庭にいた人たちはぞろぞろと校舎の中へと入って窓から見える景色はベンチがぽつりと寂しげに置いてあるだけ。


「ねえ、せっちゃん知ってた?」

情報通のせっちゃんが知らないわけがないと分かったうえで聞いてみた。


「う、うーん。なんとなく。付き合い始めたのも最近らしいし、それに西崎の話とかしないじゃん。私たち」

確かにそうだ。今まで西崎の〝に〟の字も出てこなかったし、もしせっちゃんが西崎の話をしてきたら私は多分イヤな顔をしてしまったと思う。

だから本当にこうして西崎の話をしてること自体、少し前まで考えられなかった。


「……っていうか、アイツ彼女いたんだ」

それがさっきからずっと引っかかっている。

別に西崎と親しいわけじゃないし、アイツのプライベートな部分とか全く足を踏み入れてなかったけど、なんとなく勝手に西崎は彼女がいない人だと思ってた。

なんでって聞かれたら困るけど、そんな気配はなかったし、友達と遊んでるほうが楽しいのかなって本当に私の勝手な思い込みでそう思ってただけ。

だからちょっとっていうか、かなりビックリした。