「俺あの時以上に泣くことって、この先も多分ないと思う」
西崎はそう言いながら、私が背伸びしないと届かない上の戸棚にスッとお皿を閉まってくれた。
私もあんなに泣いてた西崎って見たことないや。私はあの時泣かなかったからけっこう気持ちを引きずって情緒不安定な時もあった。
それでも西崎は私を見捨てなかった。
なのに私は……。
「今は大丈夫なん?前はよく眠れねーとか言ってたじゃん」
ほらね、いちいち忘れてていいことを覚えてる。
もしも眠れないと言ったら西崎はどうするんだろうか。
あの時のように同じ布団で眠ったり、朝までお喋りしたり、望めば手を握って夜を一緒に過ごしてくれるんだろうか。
そんな考えが一瞬過った自分に失笑して、私はいつもどおりの口調になる。
「私だって成長してるんだよ。夜中に一度も起きないくらい朝までぐっすり」
「はは、なら良かった。そのわりには中学から身長変わらねーよな」
「うるさい」
「いてっ!」
そのまま足蹴りをすると西崎は逃げるようにまたソファーへと戻った。
あの頃の私たちには戻れないけど、西崎を遠ざけたことを私は後悔してない。



