きみの好きなところを数えたら朝になった。



そこだけ切り取られた空間みたいに静かで、周りの大人たちは忙しそうにどこかに電話をしたり、慌ただしく次の準備をしていて、子どもだった私はそんな忙しさに取り残されたお母さんを黙って見てるだけ。

親戚の人や近所の人。知らないおばさんや私の名前を呼んでくれるのに見覚えのないおじさんたち。

たくさんの人がひっきりなしにうちを訪ねてきて、なにが起こったか分からないけど、とりあえずもう後戻りはできないような怖さだけは感じてた。


お母さんは病気だった。

今じゃ12人にひとりはなると言われている乳ガン。

私が小学生になる前に発病して、入退院を繰返しながらずっと治療をしていた。

幼くてまだ病気とはなんなのか分かっていなかった私だけど、成長と共にだんだんと理解できるようになって、心配させないようにムリして笑うことも、お母さんのように料理を作ることも、病気の深刻さに気づかないふりをすることも、ようやく覚えはじめていた矢先だった。

あの悲しみ以上のものはまだ7年経っても経験してない。

そんな中で、あの時の私を支えてくれたのは間違いなく西崎だった。