「先輩クレープとか苦手なのにすいません」
「ううん。俺も美味しかったよ」
先輩は本当に優しい。しかも自分のぶんは出すと言ったのに先輩にうまく交わされて結局おごってもらってしまった。そういうところが本当に大人だなって思う。
「今日のお礼になにかおごらせてくださいね!」
バスが来るまであと5分。いつもは予定どおりの時間に来ないけど、市役所行きのバスがさっき向かいの道路を通ったから今日は遅れてなさそうだ。
「じゃあ、今度自販機のジュースでもおごってもらおうかな」
「勿論いいですよ!明日にします?お昼ご飯の前に食堂の自販機で……」
私がそう言うと先輩は柔らかい顔で笑って「嘘、冗談」と私の頭をぽんぽんとした。
先輩が〝こういうこと〟をするのは自然なことなのかもしれないけど私は慣れない。
その大きな手の暖かさを感じながら先輩は私を見た。
「次はちゃんと送らせてね」
先輩は決まってそう言う。
いつも家まで送るよと言ってくれる先輩を断ってるのは私。先輩の家からは遠回りになるし、別に襲われる心配もない私を送ってもらうには心苦しくて。
その内バスが時間どおりに来て先輩は「また明日」と言って帰っていった。



