そんなことを考えていると、ふわりと鼻にお線香の匂いが通りすぎた。ふと襖が開いている居間を見るとそこにはさっきまでなかったオレンジ色のマリーゴールドが1本。

……あれって確か中庭でおじいちゃん先生が育ててたやつ。


どうやら犯人は西崎だったらしい。1本ぐらいバレないだろうと思ったんだろうけど残念。おじいちゃん先生の園芸への熱意は半端ないからバレたら絶対お説教間違いなし。

そんなことは西崎も承知のうえで。きっと〝お母さん〟が好きだったことを思い出してくれて、こうして私になにも言わずにこっそりと仏壇に供えたんだろう。

そうそう、西崎はそうヤツなんだ。


思い立ったら頭じゃなくて身体が一番最初に動くヤツで、冷めてる私と違って情に厚いところがあったりする。

だからなのかな。西崎はけっこう、いちいち覚えてる。

細かいことも私が忘れてることも、西崎は全部覚えてそうで本当に厄介だ。