きみの好きなところを数えたら朝になった。



西崎の心臓の音が耳元で聞こえる。

それが速いのかなんて、私のほうが速すぎて分かんない。


「離してっ、イヤだ……っ」

必死で身体を離そうとしても西崎に強く抱きしめられた力はビクともしない。


みんなが見てる。周りがざわついてる。

それでも西崎は軽々しく人前でこんなことをするヤツじゃない。そんなヤツじゃなかったのに、どうして……。


「雨宮、ごめん」

西崎の弱い声が耳元で響いた。


「あの日、俺桃香とのデートすっぽかしてお前のとこに行ったんだよ」

抵抗していた私の手が止まる。


……西崎があの日、公園に来た?

頭の中が真っ白になって、私は西崎の顔を見る。その顔は嘘なんて付いてなくて、私の知ってる真っ直ぐな目をした西崎だった。


「途中で道に迷ってた人がいて放っておけなくて駅まで送り届けたんだ。それで走って公園に向かった。……そしたらお前と先輩が抱き合ってた」

……あれを西崎が見ていたなんて。

西崎は眉を下げながら話を続ける。


「声をかけられなかった。そりゃ、そうだなって思った。俺がフラフラしてる間に先輩はお前のことをずっと見てたから、今さら行けないって思った」

「………」

「それで家を出た。そのあとに桃香にドタキャンした理由を正直に伝えて別れようって言ったんだ」